独立行政法人 自動車事故対策機構 中部療護センター

◎交通事故により脳が損傷し重度後遺障害者となられた方の社会復帰の可能性を追求しながら、適切な治療と看護を行なうことを目的とした、世界でも類を見ない専門病院です。

理 念




自動車事故による脳損傷で重度の後遺障害が残り、いわゆる「遷延性意識障害(せんえんせいいしきしょうがい)」となられた方を抱えた御家族の精神的、肉体的及び経済的な苦しみには極めて大きなものがあります。中部療護センターはこのような障害をお持ちの方の治療と看護、その御家族への支援を目的として、独立行政法人自動車事故対策機構により全国で4番目の療護センターとして平成13年7月に開設されました。
  本センターには3つの大きな使命があります。第一は患者様の回復に向けた治療です。リハビリテーションを主体とした治療により、外部からの刺激に対し、患者様の反応が良好となり、「遷延性意識障害」から脱却できることを目指しています。本センターにおけるリハビリテーションの特徴は「五感刺激療法」と呼ばれ、理学療法、作業療法、言語・嚥下(えんげ)療法に加え音楽療法、水浴療法、バーチャルリアリティによる視覚刺激、トランポリンを用いた運動刺激、鍼灸治療、アロマセラピーなどを取り入れることにより全身の感覚器を適切に刺激し「脳の目覚め」を促します。第二は、来るべき在宅療養への移行を円滑に行うための御家族の在宅療養へ向けての心の準備、医療知識・技術の習得、家屋の改築等への支援です。本センターにおける3年間という限られた入院期間を御家族には在宅療養へ向けての準備期間として使用していただければ幸いです。第三は臨床研究です。どのような脳の損傷が「遷延性意識障害」を引き起こしているのか、未だ良く解っていません。病態の科学的な解明が待たれます。本センターにはMRI,PETをはじめとした高度医療検査機器が設置されており、これらの機器を用いて「損傷された脳」に科学の視点を入れ、そこから得られる情報を基に、患者様一人一人に合った治療・看護を目指しています。
  本センターの理念は「愛情(love)・熱意(enthusiasm)・科学(science)」です。「遷延性意識障害の改善」というテーマは我々に課せられた極めて難しい大きな課題であり、現在も尚、治療効果の向上に向け、治療は試行錯誤の繰り返しです。私たちは粘り強くこの難題に取り組むとともに、優れた専門知識・技術と愛情によって、質の高い医療・看護を提供できるよう努めています。本センターが一人でも多くの患者様や御家族の御役に立てれば、これ以上の喜びはありません。

長崎大学医学部卒業。岐阜大学大学院医学研究科外科学専攻博士課程修了。英国Edinburgh大学留学。平成13年、岐阜大学医学部脳神経外科助教授。平成16年から中部療護センター長。岐阜大学大学院医学系研究科医科学専攻神経統御学講座脳病態解析学分野教授(客員)。木沢記念病院副院長、日本脳神経外科学会専門医(評議員)、日本意識障害学会理事、英国王立外科協会(Edinburgh)特別会員。医学博士。